久々の合同誌、久々の新作
これまでとこれから
久々のブログは、久々の新作小説の話となる。最後に小説を書いたのはいつになるのだろうか、と考えたとき、ぱっと出てきたのは「中労委令36.10.16三光インテック事件(判レビ1357.82)」だった。2020年の作品だ。6年前!? もしかしたら2022年に出した艦これ二次創作総集編の奥付を見ると、なんか書き下ろしの短編が一つあるように読めるのだが、びっくりすることに当時のことは本当に何も覚えていない。書き下ろしというのも、奥付が勝手に言っているだけの可能性もある。ともあれ、少なくとも4年間、一次創作に限れば6年間、何一つ小説を書くことのない生活を送っていた。
書かなくなったのにはわけがある。「三光インテック事件」を書いたすぐ後くらいに、別の合同誌に誘われて、乗り気だった筆者はさっそくプロットを2つほど作って、合同誌主催者である友人に「どっちの方がいいかな〜」などと相談もし、何なら書き始めてまでいた。しかし人生とはうまく行かないもので、そのあたりで急激にメンタルを崩し、会社も休職して日がな一日塞ぎこむという生活を送らざるを得なくなった。
うつ病(というのは正しくなく、後に症状は似ているがまったく別物である「双極性障害」だったとの診断が出た)とは怖いもので、脳が本当に働かなくなる。動かそうとしてもエンジンがまったくかからないのだ。休職して時間だけは膨大にあるのだから、映画やドラマを見まくれそうなものだが、ストーリーを頭に入れることすらできず、あるいはほんの僅かなキャラクターの感情の揺れにも動揺してしまい、ついぞそうしたフィクションを摂取して過ごすことはできなかった。見れた動画といえば、各地の鉄道路線の前面展望動画だけだった。短いものでも数十分、長いものだと数時間もの間、ただ電車の運転席から見える景色を何も考えずに見過ごすことしか、当時の筆者にはできなくなっていた。
そんな状態で小説など書けようはずもなく、完全に原稿を落とすという、自サークルですらやったことのない失態を、友人の合同誌でやってしまった。メンタルが回復してからも、その時のことがトラウマとなって「また落としてしまったらどうしよう、また書けなくなったらどうしよう」という怖れが、自身を執筆から遠ざけていたのは間違いない。
しかし、時は進む。「三光インテック事件」を書いてからの6年の間に、一度崩落したメンタルは炭酸リチウムによってどうにか持ち直し、寛解の診断にまでこぎ着けた。職場にも復帰し、仕事をこなし、昇進もした。私生活でも、数年後に妻となる女性とよく遊ぶようになり、付き合い、同棲し、結婚した。あと、阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一を勝ち取り、その2年後には再度のリーグ優勝も果たした。
書くか。
令和2度目のリーグ優勝の興奮も冷めやらない11月、カス麻雀仲間のcydonianbanana氏から合同誌の誘いを受けたときに素直にそう思えたのは、自身にとっての「平常への復帰」だったのだと思う。なお、カス麻雀とは防御とか牌効率とかそういうお利口さんの考えをすべて捨て、人をハメることだけを考えた待ちで気持ちよくなったり温まったりする終わりの麻雀のことである。
彼女は確かに話している
そんなわけで宣伝です。散々自分語りを散らかした挙げ句にニジエのメルマガみたいな切り替えで合同誌の宣伝に入る悪行三昧、捨て置いてしまっていいものか?
来たる9月13日に文学フリマ大阪14で頒布される合同誌『拾遺』に、短編小説「彼女は確かに話している」を寄稿した。あらゆる言葉に音階やリズムが存在し、あらゆる表現が音楽となる人工言語「ハルモニーレーレ」。その言語を母語として育てられた少女が、著作権侵害を理由に言語制作者によってその母語を奪われてしまう。映画「彼女は確かに話している」は、少女の関係者たちの証言をもとに、彼女の過去と現在、そして未来を浮き彫りにしていくドキュメンタリー作品である。……という体裁の法学SFだ。法学SFというのは、「一般的な法学テーマのフィクションと比べて、かなり精緻に法学的検討を行っている作品」という意味で筆者が勝手に使っているだけの「ない単語」で、特にSF的要素はない。冒頭数ページをサンプルとして添えておくので、興味があればぜひ手に取ってほしい。






「彼女は確かに話している」は、サークル「ねじれ双角錐群」が頒布する『拾遺』に収録されている。文学フリマ大阪14(9月13日、インテックス大阪)でのスペースはこ-16だ。なお、文学フリマ東京43(11月8日、東京ビッグサイト)でも、残部があれば頒布するらしい。現時点ではスペースは未定とのことだ。
その他の情報はねじれ双角錐群の公式ページを参照されたい。面白い小説がたくさん載った、最高の合同誌になっている。ぜひお買い求めを。