メリークリスマス
テキストサイトの話していい? いいよ!
クリスマスですね。さすがにもう「クリスマスイブなのにひとりぼっち!」とか言ってキャッキャするような歳でもないし、それでも一応盛り上がってみるかとチキンとケーキを食べたところ胸焼けで小一時間ほど動けなくなるし、歳って取りたくないものですね。
昨日――つまりはクリスマスイブに、YouTubeでも見るかーと思ってChromeのタブを開いたところ、名取さな[1]VTuber。がクリスマスイブ配信をしていて、へえと思ってそれをぼんやり眺めてたんですよ。クリスマスイブなのにぼっちな者同士でワイワイやろうぜって雰囲気の配信を見ていて、懐かしいなあ、と。
昔むかしのことなんですが、テキストサイトという文化がインターネットのどこかにありまして、簡単に言うと個人運営のオモコロやデイリーポータルZが百家争鳴としていた時代があったんです。人を笑わせる文章をアップし続けるサイトもあれば、論争を挑み続けるサイトもあり、内省的な随想を連ねるサイトもあってと、それこそ多種多様なサイトがあって、そのほぼすべてが個人によって運営される、手作りの、ほぼ文章だけで構成されるサイトでした。
ホームページビルダーや、お金のある人なんかはDreamWeaverなんかを使っていたこともあったでしょうが、ともかく自分でページを作って、自分でFFFTPなりでアップロードする。当時はWordPressやMovable Type、もっと言えばブログなんてものは存在しませんでしたからね。みんなそれぞれの思いで文章をつづり、HTMLファイルをアップロードして、ReadMe!JAPANというWebランキングに更新情報を登録する。山奥の奇祭が数年にもわたって続いているような、そんな文化がありました。
そんなテキストサイトの一部で、「クリスマスイブリアルタイム更新」という風習がありまして。テキストサイトを運営するような人間はリアルなんて大して充実していない[2]懐かしい表現だ。と相場が決まっていますので、奴らが恋人や家族と幸せな時間を過ごしている間、テキストサイトを更新し続けてやろう、という、誰も幸せにならない反骨精神でもって行われていた奇祭中の奇祭です。当然ブログやTwitterなどのようにボタン一つで更新できる仕組みもない[3]一部サイトは自前のCGIなどでそうした機構を作っていたかもしれません。僕のサイトがそうでした。ので、完全なリアルタイムというわけではないのですが、ともあれ断続的に、いつもならタイトルの横には日付だけが書かれるところを時刻も記して、クリスマスイブの間に10回や20回とFFFTPでアップロードする。
自分のサイトを更新して、他のテキストサイトが更新されているかをブックマークから見に行って、また自分のサイトの更新に戻る。何というか、よく分からない一体感を覚えて好きだったんですよね。僕が勝手にそう感じているだけだったのかもしれませんが、テキストサイトを運営している人間同士、どこか仲間意識があって、みんなでクリスマスイブを楽しんでいるというか。
そうした懐かしい気持ちを、名取さなの配信を見ていて覚えたんですよ。もう廃れてしまった文化ですが、テキストサイト、楽しかったな……。あ、最初に言っておくべきだったんですが、この記事は単なる老人の回顧でしかないので、特段の結論やまとめといった類のものはありません。なのでこの記事はここで唐突に終わります。そんじゃあね。