2025年びびび反省会

はじめに

 2024年は激動の一年であったが、2025年には海王星と土星が牡羊座へ移動し、木星も蟹座へと移動することで、これまでの困難が終わりを告げ、明るく温かな時代の幕開けとなった。びびびどんにとってもそれは例外でなく、昨年の混乱が嘘のように平穏な一年を過ごすことができた。また、2025年には天王星が双子座へと移動する革新の年でもあったが、筆者も新たなWebアプリの導入など新たな試みを行うことができた。Fediverse Advent Calendar 2025、23日の記事では、筆者の2025年のサーバー運営について振り返っていくことにする。なお、そもそもFediverseという言葉に聞きなじみがない方におかれては、昨年のアドベントカレンダーの際に分かりやすい解説記事も用意したので、先に読んでおくのもよいかもしれない。とはいえ、本記事はFediverseの知識を大して必要とはしない。また、ここまでつらつらと書いてきた西洋占星術の話は、本当に何も理解せず適当にググって出てきたページ3つほどを参考にでっち上げたもので、誰に恥じることない立派な文化盗用である。筆者は西洋占星術への知見を一切持っていない。

Mastodon: びびびどんの安定運用

 自己紹介が遅れたが、筆者は「びびびどん」というMastodonサーバーを運営するへったくれである。先ほどリンクも張ったとおり、昨年の2月にはサーバーのデータをすべて吹き飛ばしてしまうという大事故を起こしてしまったが、今年についてはどうにか安定運用を続けられている。サーバーダウン自体、アップデート等による計画的なものを除けばほとんどなかったのではないかと記憶している。Cloudflareの大規模障害で数時間ほどアクセス不能になったことはあったが、それはさすがにノーカンとさせてほしい。まあそれくらいの安定運用は大抵のサーバーがキッチリやれていることなので、誇るようなことでもないのだが。

 ところで、びびびどんが今年爆発炎上しなかったのは、他の様々なものが身代わりになってくれたからなのかもしれない。1月には買って間もないiPhone 15 Pro Maxを落として液晶を割り、1万円強の修理費を支払うハメになったうえ、5月にはPCのブートSSDが急死して、新しいSSD代とWindows代で3万円以上の出費を強いられた。びびびどん自体は特筆すべきこともない平和さで書き高に欠けたものの、その分を補って余りある惨状だった。本当に勘弁してくれ。

PeerTube: むびびどんの運用開始

 2025年の新たな取り組みとして一番大きかったものといえば、PeerTubeインスタンスの開設だろう。1月14日に開設した「むびびどん」は、原則としてびびびどんユーザーにだけ開放しているクローズドなインスタンスではあるものの[1]動画・配信の視聴やコメントなどは誰でも可能。、多くのユーザーがゲーム配信などに利用してくれている。アクセス不能に至るような障害も今日に至るまで発生しておらず、安定的な運用ができているのも嬉しいところだ。筆者自身も東方花映塚やGeoGuessrなどのプレイ動画を配信していたが、ここ数ヶ月は放置してしまっている。もう少し配信の頻度を高められるようがんばりたい。

 PeerTubeはもともとオレンジ色を基調としたUIなのだが、プラグインを作成することでかなり自由にデザインを変更することができる。そのため、英語の公式ドキュメントを参照しながらがんばってカラーテーマの変更とWebフォントの導入など、多少のカスタマイズを行った。PeerTubeは日本語の資料が非常に少ないが、その分公式ドキュメントがとんでもなく充実しているので、英語さえ読めるなら(機械翻訳でも構わない)導入に大した苦労はしないと思う。現在、日本語圏のPeerTubeはインスタンスも多くないため、興味のある人はぜひ導入を検討してほしいところだ。YouTubeやTwitch、ニコニコ動画のような都会でがんばるのも悪くないが、片田舎で一から配信サイトを作って、再生数も気にせず趣味の動画を上げるスローライフも楽しいものだ。

Nextcloud: 脱Dropboxの悲願へ

 クラウドストレージに関しては長年Dropboxを利用してきたが、無料ユーザーがアクセス可能な端末が3台までに制限されて以降、じわじわと不便を強いられ続けてきた。そうでなくとも他のクラウドストレージで、実務的な法運用の観点からは違法になどなり得ないようなファイルが「違法なファイルである」と判断されて削除されたり、アカウント自体がBANされたりという話も聞く。そもそも「ユーザーが個人的に保存しているファイルを勝手にプラットフォーマーが解析している」ということ自体に――規約上・プラットフォーマーの所在する国の法律上それが認められていたとしても――検閲の禁止・通信の秘密が憲法上保障される国の国民としては感覚的な不信感が拭えないし、プラットフォーマーの一存でファイル削除ないしアカウントBANがなされうるというのは、ストレージとして致命的なリスクであると言わざるを得ない。

 そういうわけで、クラウドストレージを自分自身のコントロール下に置ける状態にしておきたいという思いはかなり前から持っていた。そんな折、2024年に『文体の舵をとれ』のdiscord合評会に参加した際に、合評の録音データをどこに保管するかという問題が立ち上がった。後から聞き返したり、欠席者がアクセスしたりのためにも録音の保管は必須なのだが、いかんせんファイルサイズが大きくdiscordサーバーには置いておけない。これは「機運」ではないか? と保管場所の提供を申し出て、そのためのシステムとしてDropboxライクなOSSプロジェクトであるNextcloudを導入することにした。恐ろしいのはこの申し出が完全な見切り発車だったことだ。この時点ではNextcloudのドキュメントをパラ見して「……インストール、できそうやな!」という所感を抱くという程度の検討しか行っていない。

 果たしてそんな甘い見積もりで万事上手くいくわけもなく、そのときはインストールに失敗し続けて諦めることにし、Growiの非公開ページにアップロードする方法をとることにした。ただ、やはり諦めきれないなあという思いはくすぶり続けていて、文体の舵も全課題を終えた今年の6月5日に何となくインストールに再チャレンジしてみたところ、なんか嘘のようにすんなりとインストールできてしまった。……なんで?

 というわけで、現在はもっぱらクラウドストレージにはDropboxではなくNextcloudを使うようにしている。幸いサーバーのストレージは潤沢にあるため、容量を気にすることも特にない。

Karakeep: Pocketの訃報に際して

 長年にわたり、Pocket(旧称Read It Later)というWebサービスを愛用してきた。Webページをサーバー上に保存し、後で読み返すことができるというもので、小説のネタ集めなどに非常に重宝していたのだが、2025年5月22日に突然サービス終了が告知された。ブラウジング習慣やオンラインのニーズが変化していることが閉鎖の理由、とのことだが、正直よく分からない。分からないが、これは一大事だ。Pocketがなくなれば、どれだけ情報を収集しようがWebサイトの閉鎖などがあれば霧散してしまう。どうでもいいという人もいるのだろうが、データ収集癖のある筆者にとっては死活問題だった。

 そんなわけで即刻代替サービスを探したものの、そもそもPocketが一番使い勝手がよいからPocketに定着していたわけで、今さら別のサービスに移住する気にもなれなかった。それにPocketが終わった今、他のサービスが終わらないという保証はどこにもない。今必要なのは意義に欠ける延命策ではなく、恒久的な解決策だ。そうだね、自分自身が運用しちゃえば解決するね。

 ということでPocketライクな機能を持つOSSを探しに探し、Linkwardenなど複数のアプリを検討した結果、Karakeep(旧称Hoarder)なるアプリを導入することにした。導入も割とすんなりといき、5月26日には既に運用を開始できたのは僥倖だった。このKarakeep、日本語の情報が本当に少なく、ほぼRedditの機械翻訳くらいしか見当たらないのだが、少なくとも筆者の肌感には一番合っていた。UIがシンプルで動作も軽快なうえ、OpenAIに半導体買い占め料を上納することでAPIを叩けるようにすれば、保存したWebページの内容を自動で読み込んでタグ付けまでしてくれる。iPhoneアプリもあるので出先でも気軽に保存できるし、なんならPocketよりも便利になっているまである。こんなにいいプロジェクトが日本語圏で言及されていないのは寂しさを感じる。KarakeepはFediverseを構成するソフトウェアではないのだが、この素晴らしいソフトウェアがもっと広まってほしいという思いも込めて独立した項とした。みんなも使おうKarakeep。

その他

 その他に筆者が運用しているWebサービスとしては、WordPressとGrowiがある。前者は言わずと知れたCMSで、このブログもWordPressによって運用している。また、筆者は高校生の頃から「びびび文庫」という静的サイトも運営していて、もともとはテキストサイトだったのが、同人活動をやるようになってからは個人サークルのWebサイトとして運用している。こちらはもともとブログとは違い、HTML(より正確に言えばXHTML1.1[2]『Web標準の教科書』に感化されてStrictなページを作成したかったこと、ルビを使用したかったこと、そして構築当時はまだHTML5が草案段階に過ぎなかったことから、XHTML1.1を採用した。)を手打ちして運用管理していたのだが、管理が面倒すぎるのと、自分のCSSの技術力に限界を感じたことにより、2024年にこちらもWordPress化した。2025年の動きとしては、一部に外字用のWebフォントを導入したことが挙げられる。Webサイトに記載するメールアドレスは、一般的にはアットマークを◎などの記号に変えたり、画像化したものを表示するなどの手法がよくとられる。ただ、個人的には前者は見た目がよくなく、後者も環境によっては表示が荒くなって不自然、ということもあって、どちらもできれば採用したくなかった。そこで筆者は、各文字を数値文字参照化[3]例えば「a」という文字を「a」のように文字コードを用いて記述すること。のうえ、各文字の間にランダムな個数のゼロ幅スペース[4]幅が0ピクセルの目に見えないスペース。本来的には、長い英単語が段幅によっては一行に収まらないような場合に、改行ポイントとして挿入する。を挿入する、という手法をとることにしていた。当初はこれにより確かにメールアドレス収集ボットの目も逸らすことができたが、昨今のボットはとても賢い。そのうち普通に持ってもいないクレジットカードや開設してもいない証券口座の重要なお知らせがどしどし届くようになった。仕方がないので、今度はメールアドレスのアルファベット部分を通常のものではなく、Unicodeの数学用英数字記号(𝐁𝐈𝐆 𝐋𝐎𝐕𝐄みたいなやつ)に置き換えてみたが、これも一瞬で突破された。それにこれらの方法は読み上げソフトとの相性が致命的に悪く、視覚にハンディキャップを持つ人を排除するやり方でもあった。

 そこで今年の秋頃から、新たにWebフォントのリガチャ(合字)機能を用いる手法を試してみている。リガチャとは、複数の文字を一文字にまとめたもので、例えば主要な欧文フォントを用いて「ffi」と入力すると、適切な設定がなされていればfの縦画起筆部(杖の取っ手部分)とiの点が一体化して「ffi」のように表示される。この機能を用いて、メールアドレス全体を一つの文字としてフォント化し、そこにメールアドレスのカタカナ読み(エイチ、オー、ジー、イー、アットマーク……)を設定することで、表示上は周囲の文字に溶け込んで表示される上、読み上げアプリ上の挙動も幾分マシになる[5]それまでの手法同様、この手法もコピーペーストに非対応にはなるが、それは視覚にハンディキャップを持たない人も同様だ。さすがに筆者側にもSPAMメールという看過しがたい被害を避けるため、合理的な範囲でユーザーの利便性を下げる権利はあると信じている。。この手法は今のところ上手くいっている。あれだけ取り付け騒ぎのように押し寄せていたSPAMメールが、この手法の採用と同時に新たに作成したメールアドレスには今日まで一件も来ていない。

 WordPressにずいぶんと紙幅(バイト幅)を使ってしまったが、Growiの話もしておこう。こちらは2025年、本当に何もなかった。強いて言えば、デザインを動的に変更させたくてJavaScriptを書こうと思ったものの、やりたいことが自分の技術力を超えていたのでChatGPTにやり方を聞いてみたところ、ばっちり動くコードとその解説をお出ししてもらえて「ふーん、すごいじゃん」となったくらいだ。まあでもよくよく考えれば、クレジットカードを窃取するコードすら書けるんだから、そりゃしょうもなObserverパターンくらい書けるよな……。

 また、その他2025年にサーバー関連で行った特筆すべき事項としては、ステータスページのリプレイスが挙げられる。それまではデザインが優れているという理由でCachetというソフトウェアを用いていたが、単体では監視機能が存在しないうえ、動作もかなり不安定でバグも多かった。バグの中には筆者でも修正可能なものもいくつかあったため、プルリクエストをしようかとも思ったのだが、どうも作者は新バージョンの開発に専念しているらしく、現行バージョンへの対応はもう行わないらしい。そしてその新バージョンもまだ稼働できるところまでは開発が進んでいないようだった。というわけで、このまま現行バージョンのCachetを使い続けるのは望ましくないように思えたので、11月26日にGatusという別のソフトウェアに移行した。挙動は極めて軽快で、デザインも申し分ない。多言語対応はしていないようだが、ステータスページを見るような層はそこに記載されている程度の英語なら読めるだろうということで気にしないことにしている。

2026年の展望

 2024年はひたすらMastodonと格闘するだけの1年だったが、2025年はMastodonの運用を安定化させたうえで、他の様々なソフトウェアにも手を出すことができ、非常に有意義な1年だったと感じている。2026年もこの調子でいろいろなことに挑戦していきたい。例えば、Karakeepは今のところ自分専用のサービスとして運用しているが、びびびどんユーザーなどに開放するのもありかもしれない。ただ、その場合はAPI料金をどうするかという問題はあるのだが。

 また、今気になっているものとしてはPixelfedがある。Pixelfedは、MastodonやPeerTubeと同じくFediverseを構成するSNSの一つで、Instagramのような写真共有を主目的としているものだ。犬を飼いたいなあという話は妻と毎日のようにしていて、今後実際に犬を迎え入れた際は自前のPixelfedに犬の写真を鬼のように公開し続けたい。また、もし子供を授かったら、非公開アルバムで成長記録をつけていくのもいいかもしれない。今はMastodonに直接投稿している日記の写真も、Pixelfedに移行するのもいいかもだ。写真が趣味の友人を誘えるとよりよいかもしれない。夢は広がる。

脚注

脚注
1 動画・配信の視聴やコメントなどは誰でも可能。
2 『Web標準の教科書』に感化されてStrictなページを作成したかったこと、ルビを使用したかったこと、そして構築当時はまだHTML5が草案段階に過ぎなかったことから、XHTML1.1を採用した。
3 例えば「a」という文字を「a」のように文字コードを用いて記述すること。
4 幅が0ピクセルの目に見えないスペース。本来的には、長い英単語が段幅によっては一行に収まらないような場合に、改行ポイントとして挿入する。
5 それまでの手法同様、この手法もコピーペーストに非対応にはなるが、それは視覚にハンディキャップを持たない人も同様だ。さすがに筆者側にもSPAMメールという看過しがたい被害を避けるため、合理的な範囲でユーザーの利便性を下げる権利はあると信じている。