買いよし2025
2025年もいろいろ買いました
買うことで豊かになれる(最悪の資本主義標語)。というわけで、今年も買ってよかったものリストを公開していこうと思う。もし読者のみなさんに購入を考えているものがあって、この記事が参考になれば幸いだ。中には誰の参考にもならないのが明らかなものも含まれているが。
なお、昨年に引き続き「買ってよかったもの」というリストの趣旨上、リストアップの対象とするのは直接的に購入したモノに限り、いわゆるコト消費やトキ消費によって得られたモノは除外した。
阪神タイガースセ・リーグ優勝記念NPB公式球
いきなり誰の参考になるんだというものがリストアップされたが、まあ聞いてほしい。きっと参考にはもちろんならない。
2023年のリーグ優勝時は、記念グッズとしてピアノ塗装記念プレートを購入したのだが、これが案外というか当然というか、結構なスペースを食う。それでも18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一というメモリアルなのだから記念品なんぞ大きければ大きいほどよい、と思っていたのだが、2年後にまた優勝したとなると話が変わってくる。おかしいぞ。僕の知っている阪神はこんなにホイホイと優勝するような強豪ではなかったはずだ。こんな強いチームがリーグ優勝するたびに記念プレートなんか買っていたら、スペースがいくらあっても足りなくなる。そんな不安が頭をよぎった。そう、筆者は杞の出身である。
そこで今年は記念グッズとしてNPB公式球を買ってみたのだが、これが大当たりだった。かさばらないのに存在感はどっしりとあり、すぐ手近な場所に置いて作業の傍らに眺めることすらできる。あと、これは株式会社阪神タイガースには申し訳ないのだが、安い。記念プレートは数万円もするというのに、公式球は5000円程度と破格の値段だ。そんなわけで今、筆者の部屋には2023年の記念プレートと2025年の記念公式球、そして2025年の記念プレートが鎮座している。
オーダーメイド枕
寝具に金をかけるべきだという話は昨年もした。昨年はその理屈でフランスベッドのマットレスを買い、生活の質を大いに高からしめたが、一方で枕については実家から適当に持ってきたクソザコ枕を使い続けていた。最高級のパティをその辺のパン屋のバンズで挟んだようなものだ。果たして枕が体に合っておらず、首痛が持病のようになってしまった。そこで一念発起して、オーダーメイド枕を作ってみることにした。以前から興味はあったのだが、起床時に激烈な首痛を覚えて会社を休むということが月に2回も発生したことで、このままではいけないと踏ん切りがついた形だ。今回選んだのは布団の西川が運営する「自遊自材」というブランドのオーダーメイド枕で、一つ3万円もする。公式球が6つも買える。しかしこの3万円ははっきりと「払うに値する」3万円だった。
自遊自材の枕は、まず店頭で首の位置などを計測し、高さや素材を調整しながらプロトタイプを作成する。それをレンタルして1週間試し、体に合わないようなら店頭に持ち込むことで微調整ができる。微調整した後は再度1週間のお試し期間だ。まだ体に合わないようなら2度目の微調整も可能らしく、実際何回までできるのかは分からないが、筆者は一度微調整をお願いした。店頭で試すのと自宅で試すのとではマットレスの柔らかさなどが変わり、寝心地に大きく跳ね返ってくるので、店頭だけで決めず自宅で試せるのはありがたいことだ。満足いく枕になったら店に連絡し、レンタル品を返却して完成品を受け取る。お金もこの時に支払う(一応初回レンタル時にデポジットとして数千円だけ支払うが)。
自分の体に明確にあった枕に変えてからというもの、ただの一度も首痛に悩まされることがなくなった。これは本当に素晴らしいことだと思う。日々蓄積する痛みというストレスから解放される素晴らしさ。スリップダメージを無効化する装備がいかに有用か、といえば分かりやすいだろうか。もしくは住宅ローンの支払いが実質なくなる税制でもよい。さっさと税制改正大綱に盛り込め。モラルハザードなど知ったことか。
スマートホーム対応エアコン
現在の家に引っ越したのは昨年の11月で、入居当時はエアコンが存在しなかった。下手にいつ壊れるかも分からない残置物があるより、まるきり存在しない方がマシだという判断だ。時期的にもエアコンは必要なく、筆者と妻はガスファンヒーターやセラミックヒーターで暖をとっていた。しかし、季節が巡ればエアコンなしでしのぐことなど不可能になる。そこで4月頃にダイキン製のエアコンを各部屋に配備した。もともとスマートフォンやアレクサでの操作を念頭に置いていたため、管理を煩雑にしないためにもメーカーやシリーズは同一のものとした。
エアコンが「買ってよかったもの」にならないことなどあり得ないとされている。当たり前の話で、暑い日に冷たい風を吐き出してくれる不思議な物体に、感謝と畏敬の念を持たないわけがない。また、スマートフォンやアレクサでの操作ができるのも、目論見どおり非常にアドバンテージが大きかった。帰宅中にiPhoneからエアコンの電源を入れれば、家に着く頃にはしっかり涼しくなっている。家事の最中などで手が離せなくても、アレクサに頼めばハンズフリーでエアコンを操作できる。それどころか、アプリでスケジュール設定をしてしまえば、毎朝起きる少し前の時間になるとエアコンが自動的につき、家を出るころには勝手に切れる、といった運用も可能だ。リモコンを握る必要のない生活、リモコンを探す必要のない生活。人類の進歩の極地と言えよう。
食器棚
入居当初は準備が間に合わなかった必須家具は、なにもエアコンだけに留まらない。我が家には食器棚も長らく存在しなかった。大抵の家庭では食器棚に配置される電子レンジや炊飯器、電気ケトルといった類の調理家電は、食器棚建設予定地の床に直置きされていた。大らかな家庭(婉曲表現)である。そんな我が家にも、2月になってようやく食器棚がやってきた。電子レンジを買う際、後のことなど何も考えず「焼き菓子を作りたい!」というちいかわみたいな理由で大きめのコンベクションオーブンを選んでしまったため、一般的な食器棚だと奥行きや耐荷重が足りなくなるという問題があり、それが食器棚の選定に時間を要する理由にもなっていたのだが、購入した食器棚は寸法も耐荷重も申し分ない。それでいて外観も白いメラミン加工が清潔感を与えてくれるうえ、何よりアチアチゾーンが非常に広い!
賢明な読者諸氏には先刻承知のこととは思うが、老婆心を承知で解説すると、アチアチゾーンというのは電子レンジやトースターで温めた食材などをいったん置いておくためのスライドテーブルを指す、我が家の独自用語だ。取っ手を引くとただ平らな板が出てくる、あれのことだ。このアチアチゾーンは広ければ広いほどよいとされている。というのも、狭いと「電子レンジは近いけどトースターからは遠いので、トースターを使うときに火傷しそうになる」といった事態に陥りかねないのだ。その点我が家の食器棚は、全体幅の7割ほどを占める広大なアチアチゾーンを有している。電子レンジ、トースター、炊飯器、どのアチアチ食材もすぐに待避できる優れたデザインだ。読者諸氏においても、食器棚を選ぶ際はアチアチゾーンの広さを考慮に入れることをおすすめする。
やや強めのPC
これは買ってよかったものリストの本来の趣旨である「非常に有用だったり、生活を豊かにしてくれた一品」といった定義からは、少なくとも現時点では外れているのだが、比較的大きな買い物であり、かつ買ったことを大正解だと感じているので、逸脱を承知でリストアップした。
結婚前から妻は自分用のPCを持っておらず、何らかの作業をする際はいつもiPadを使っていた。実際、彼女のやりたい作業のほとんどはiPadで完結できるものだったため、PCを買う動機は弱かったようだ。ただ、そうはいってもあると何かと便利なのがPCだ。PCがあればiPadよりも容易に終わらせられる作業も少なくないし、彼女の好きな東方Projectなどのゲームがいつでもできるという魅力もあって、「今すぐにではないけど、そのうち買いたいね」程度の温度感で買い物リストに入り続けていた。
そんな中で、12月初頭に転機が訪れる。メモリ・SSDの人気ブランドCrucialが消滅するというニュースが、前触れもなく舞い込んできたのだ。Crucialを運営する米Micron社によれば、同社は増え続けるAI企業向けのメモリ・SSD需要に対応するため、コンシューマー向けブランドであるCrucialを廃止して、法人向け事業に資源を集中することにしたのだという。Crucialはユーザーの信頼も厚く、流通量も多いブランドだった。その消滅はすなわち、市場のメモリ流通量が激減し、価格の高騰に繋がる。実際はそれ以前からメモリの相場は急な上昇を見せていており、その時点では「ほーん、なんか騰がっとるけどそのうち反発するやろ」くらいに構えていたのだが、Crucialの消滅はさすがにインパクトが大きかった。ニュースを見たその日のうちに「PCを買おう! 今ならまだBTO業者にもメモリの在庫がある! 今買わないと値段が爆上がりして最低1年、悪ければ2〜3年は買えなくなる! 金なら出すから!」と妻を説得し、翌日には注文を済ませてしまった。
狼狽買いのような形にはなってしまったが、メモリの増産には巨額の設備投資と数年スパンの時間を要するため、そう易々と相場が回復するものではない。Crucialの消滅によってメモリの市場流通量が大幅に減ることは確実なため、コロナ禍のトイレットペーパーとは一線を画すものだと信じている。ともあれ、現時点ではこの購入は正解であるように見える。購入の半月後に同一構成の相場を確認したところ、購入時から10万円以上も高くなっていた。そしてその一週間後には、ほぼすべてのBTOブランドが受注停止や納品の大幅延期に見舞われていた。市場を大混乱に陥れるAIを許すな。
MacBook Pro
転居してからというもの、毎日通勤するために片道1時間ほども費やしている。往路は基本的に少しでも睡眠時間を稼ぐのに心血を注いでいるため、さしたる問題はないのだが、復路で何をするかという問題は常につきまとっていた。iPhoneでYouTubeを見たり漫画を読んだりして過ごすことが多いのだが、この時間の過ごし方には大きな問題がある。「やってる感」の欠如だ。特に電車に乗ってから降りるまでの数十分すべてをショート動画に空費してしまった日など、絶望的なまでの「何一つ有意義なことをできなかった」という罪悪感に襲われる。
折しも友人から小説合同誌に誘われることになり、いよいよ隙間時間も活用しての執筆を余儀なくされることになったため、妻のPCとほぼ同時に、自分用のノートPCも買うことにした。用途的にも持ち運びが容易であることが第一条件となるため、SurfaceかMacBook Airに的を絞ったうえで、価格や軽快さなど複数の観点で比較検討を行った。この際、試しにClaudeにも相談してみたのだが、結構それらしい回答をよこしてくるうえ実際裏取りをしてみればちゃんと的を射ていて、AIもなかなかやるじゃんと見直した。やればできるじゃないか、やはりAIは人類の善き友であり善き教師だ。は? メモリ市場の混乱? そんなもん簡単に踊らされる愚昧な人類が悪い。
そんなわけで、最終的にMacBook Airを買うといいらしいという結論に至り、Appleの注文ページにアクセスしたのだが、そこから十数分ほどの記憶がない。気がついたときにはMacBook Proの注文受付メールが届いていた。怖かった〜。結局メモリ高騰の影響もほぼ受けないMacにするのであれば、そこまで急ぐ必要もなかったのではという気もするが、結局買うのなら早く買う方が嬉しいというのが筆者のモットーだ。とどいたMacBook Proは非常に軽快で満足している。この記事もMacBook Proを用いて執筆した。
結婚指輪
結婚指輪は買ってよかったとかそういう類のものではないだろ、という声もあるだろうが、筆者は実際モノとしてもこのアクセサリを気に入っている。結婚指輪といえば、毎日つけるものなので極めてシンプルなものを作る向きも大きいとは思うが、筆者夫婦は逆の考え――毎日つけるんだからできるだけつけていて楽しくなるデザインにしたい、という発想からスタートした。
リングはゴールドとプラチナのバイカラーデザインにして、縁のゴールドにはミル打ち、メインのプラチナには槌目加工を施すという、飽きの来ない変化に富んだデザインにした。これが非常によく、ふと指輪に目が行くと、金色の細やかなミルグレインに挟まれて、銀の槌目が光を乱反射させる。見ていて面白く、暖かな気持ちにもなる。日々をほんの少しだけ彩るアイテムとしては、これ以上のものはないだろう。
ちなみに、指輪の内側には御多分に漏れずメッセージを刻印しているが、別に普段から使っているわけでもない英語やらフランス語、ラテン語なんかを刻むのはなんか気取っていて、二人の雰囲気には合わないね、という夫婦間の意見の一致を見たので、いろいろと考えた結果、二人ともサンリオで育ったこともあり、「ZUTTO ISSHO」というメッセージを刻むことにした。日本語をローマ字で表記するの、サンリオっぽくて愛せる……。
茶こし付きピッチャー
急に価格帯ががくんと落ちたが、安いものを買ってよかったと思ってはいけない道理はない。我が家では夏も冬もピッチャーにありったけの緑茶を作っては冷蔵庫に備蓄し、日がな一日がぶ飲みしている。最初は買ってきた茶葉をお茶パックを詰め、ピッチャーに入れてお湯を注ぐやり方を採用していたが、茶葉をお茶パックに詰める作業は毎日やるには面倒で、まとめてやるには死ぬほど面倒という欠点があった。また、十分にお茶が出た後にパックを取り出す作業も、毎日やるにはまあまあだるい。
そこで茶こし付きのピッチャーを導入してみたところ、お茶を沸かす作業が随分と省力化された。今回購入したfrancfrancのピッチャーは、茶こしがあるだけでなくデザインもかわいく、そして茶こしピッチャーの中ではトップレベルの2Lという大容量なのもありがたい。現在、我が家では茶こし付き2Lピッチャー2つと茶こしのない2Lピッチャー2つを用いて、日産2Lのお茶を生産・消費している。具体的な日次ルーチンとしては、①乾燥の終わった茶こし付きピッチャーAに茶葉とお湯を投入し、②同時に同じく乾燥の終わった通常ピッチャーaに、茶こし付きピッチャーB(前日に沸かしたもの)と通常ピッチャーb(前々日に沸かしたもの、こちらはほぼ残っていない)を移動させ、③茶こし付きピッチャーBと通常ピッチャーbを洗浄乾燥させる、という流れになる。家事の工業化ほど楽しいものはない。
クロテッドクリーム
昨年のタフグミ同様、臆面もなく食品を買ってよかったもの扱いしていく。妻はアフタヌーンティーが好きで、よく友人と連れ立ってお茶しに行っているし、何度か筆者も付き合ったことがある。ただ、写真で見るアフタヌーンティーセットの菓子類の多さに尻込みしてしまい、いつも普通の食事を頼んでしまっていたので、実際にそこで供される茶菓子を食べたことは一度もなかった。アフタヌーンティーで幸せな表情を浮かべる妻の眼前で堂々とパスタを食べる共感性の低い夫、ただちに炎上してもおかしくない。
そんな夫婦生活を営んでいたところ、年末にうめだ阪急でイギリス展なる催事が行われているらしいと妻に教えられた。妻の目当ては茶葉とスコーンとクロテッドクリーム。筆者はクロテッドクリームというものは聞いたこともなかったが、それはともかくとしてショートブレッドは大好物であったため、ニコニコしながら妻に付き従ってうめだ阪急の催事場へと足を運んだ。ちなみに、ここで供されていた本場イギリスの名店によるフィッシュアンドチップスは本当にバカみたいに美味く、国内有名アイリッシュパブチェーンのフィッシュアンドチップスをありがたがっていたのは一体なんだったのだろう、と衝撃を受けた。イギリス人が日本のフィッシュアンドチップスを食べてあまりの美味しさに愕然とした、などというナショナリズムデマゴーグに騙されてはいけない。インターネットに真実などない。
さて、そのクロテッドクリームなるものの味に戻ろう。帰宅した後、妻が「死ぬほど盛ると死ぬほど美味しいんだよ~ん」と言いながらクロテッドクリームをスコーンに死ぬほど盛り、惜しげもなく手渡してくれたので、試しに食べてみた。脳が爆ぜるかと思った。美味すぎる。こんなに美味しいものがあっていいのか。というかスコーン自体もハチャメチャに美味い。産業革命を推し進めて太陽の沈まぬ帝国を打ち建てた国の、糖分に対する真剣さを見た気がした。
おまけ:買っていまいちだったもの
妻は喉が弱いので、特に冬場は加湿器が欠かせない。新居に引っ越したこともあって、今年の初売りで新しい加湿器を買うことにした。ある程度リサーチして、山善のスチーム式加湿器がコストパフォーマンスに優れているという情報を得たので、それを買うことにした。製品自体は満足のいくもので、デザインもよく加湿機能にも不満は感じなかった。だが、この手のいわゆるジェネリック家電メーカー品の真価が問われるのは、通常稼働中ではなく、消耗品が切れた時なのだと痛感した。
スチーム式の加湿器には実に多くの消耗品が付属する。水道水を加熱蒸発させるのだから、カルキへの対策は欠かせないのだ。山善の製品も例にもれず、数種類のフィルターが用意されていて、それぞれに耐用期間も設定されていた。実際に耐用期間間際にもなると、フィルターは目に見えて、手に触れてボロボロになっていく。付属の説明書にはフィルターの型番も書かれているので、それを追加注文すればよい、はずなのだが、本当にどこを探しても売っていないのだ。ヨドバシ・ドット・コムにもAmazonにも、なんなら山善の公式オンラインストアにも取り扱いがない。今も新品が販売されている加湿器の消耗品をどこも(公式すら!)取り扱っていないなんてこと、あり得るか? いくらジェネリック家電とはいえこの仕打ちはひどい。残念だが、このメーカーの製品を買うことはもうないのだろう。
おわりに
2025年買ってよかったものアワードには上記9品がノミネートされ、厳正なる審査の結果、栄えある大賞には阪神タイガースセ・リーグ優勝記念NPB公式球が選ばれた。阪神タイガースセ・リーグ優勝記念NPB公式球は、一昨年の大賞受賞者である阪神タイガース日本一記念クリスタル盾からトロフィーを授与され、その後の受賞スピーチで差別と分断のない世界を訴えて会場は万雷の拍手に包まれた。また、オーダーメイド枕と結婚指輪には特別賞が授与され、昨年大賞だった東芝製ドラム式洗濯機から記念品が手渡された。